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越後名寄
一国
越後大々上国也、凡其形状計、南西より東北へ縦長にして、越中の国境市振の駅より、出羽の国域府屋の駅迄、凡八十有余里、横の広さお計見る処三十里に及べり、最不可為小国也、東南に聳高山而険隔陽気、西北に帯海水有余陰気、故常寒湿深し、殺伐之気烈く、雪の降事早し、仍東南の峯には九月の中より頂白く、歴三春到四月五月、猶残雪あり、然れども土地肥て草木繁茂し、五穀みのる、作然亦秋に到り湿雨多く、刈採乾兼る故に、穀不堅、仍年により夏お向へて腐る事あり、