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佐渡志
一形勝
此国のかたち、山また山つらなりて、海の面に臥横たはれるが、其中断て坦かなる所に、田多く開け、湖潮湛えぬ、遠く是お望むに、其地勢二つに分れたるが如し、さてこそ土人の詞に、大佐渡小佐渡(○○○○○○)ともいひ習はしたるにや、大概山深からずといへども、必険しく、川闊からずといへども、必清らか也、国の周りにある村里、多くは山に背き海に向ひ、或は岸そばだち巌するどに、或は汀浅く石出で、潮の声常に怒り、大船およすべき所殊に少し、実に天下の絶険とやいふべからむ、今の府治は善知鳥の郷相川里〈古加茂郡の地にして、今は雑太郡の内となりぬ、委しくは建置の条に出せり、〉にありて、東の方銀山に倚り、西の方大海に臨み、南北皆澗お帯て、七十余街其中に開けり、