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諸国名義考

丹波 名義は田庭なるべし、度会の外宮の豊受大神、此国にましまして、内宮の皇大御神の朝夕の大御食奉り給ふ故に、しかおひし名なるべし、延暦儀式帳に、天照坐皇大神雲々、大長谷天皇(おほはつせのすめらみことの)〈◯雄略〉御夢爾誨覚賜久(みゆめにおしへさとしたまはく)、吾高天原坐氐(わがたかまのはらにまして)、見志真岐賜志処爾(みしまぎたまひしところに)、志都真利坐奴(しづまりましぬ)、然吾一所耳不坐波甚苦(しかるにそがひとつところにまさではいとくるし)、加以大御饌毛(しかのみならずおほみけも)、安不聞食坐故爾(やすくきこしめさずますゆえに)、丹波国比沼乃真奈井爾坐(たにはのくにひぬのまないにます)、我御饌都神等由気大神乎我許欲(わがみけつかみとゆけのおほかみおわがもとにほりすと)止誨覚奉支(とヾめんとおしへさとし)、爾時天皇驚悟賜氐(まつりきときにすめらみことおどろきさとり玉ひて)、即従(すなはちより)丹波国(たにはのくに)令(しめ)行幸(いでまさ)氐(て)、度会乃山田原乃下石根爾(わたらひのやまだのはらのしたついはねに)、宮柱太知立(みやばしらふとしりたて)、高天原爾比疑高知氐(たかまのはらにひぎたかしりて)、宮定斎住奉始支(みやさだめいはひつかへまつりはじめき)、是以御饌殿造奉氐(こヽおもてみけどのつくりまつりて)、天照坐皇大神乃朝御饌夕大御饌乎(あまてらしますすめおほみかみのあしたのおほみけゆふべのおほみけお)、日別供奉(ひごとにそなへまつりき)雲々、とあるにて、朝夕の大御饌お主り給ふ神の坐しヽ国なるが故に、田庭と号けヽむ、庭とは平かに広きおいふ、斎清めたる稲お忌庭之穂といふにてもしらる、〈◯下略〉