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人国記
丹波国 丹波国之風俗は、人の気堕弱、面々格々にして、十人は十様に而、我が身お自満し、人お誹り、人之誉れ有お可誉とはせず、而余之人之、夫より誉れ多きにたくらべて是お誹るの類にて、悉皆女人の風俗に不異、下劣も従て己が日夜勤る処の耕作の道は第二に而、商売お本とする事、偏に身之栄花おせん事お常にたくみ、都而勇寡ふ而諂強く、昨日味方に有し人も今日は敵となり、亦前になり替り渡世する類之風俗、最哀れ成形儀、不及是非ども也、雖然自然に能き人出生せば、気の柔なる意地より、成立風儀なれば、双ぶ方なき程の人も出来べし、天下乱れて是国おおさめば、五日之内に可従なり、