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因幡民談

因幡国郡郷村里広狭路程等事 一国の風気畿内中国とは少替りたる事もあり、四時共に京畿中国より雨しげくして、冬は十月十一月の比より雪ふり、十二月明る正月二月比まで消やらず、されども京畿余州より甚寒することはすくなく、冬の内あたヽか也、然によりて東北国などのごとく甚しく、氷つらヽなどの結ぶこと少なし、雪の深きこと古今都鄙の不同あり、昔はいかなる所も五尺七尺山中などは程もなく降けるといへども、近年四五年このかた、里辺城下などは毎年大概二尺三尺の内外なり、又山中深山の間は七尺八尺一丈もふる所多し、つ子に雨気がちなる故に、耕作日損は少くして、雨しげき年は田畠必みのることなし、年により洪水の患あることあり、大きなる悪風などは吹こと希也、地震は昔より大にゆること更になし、隻毎年春より夏の初に至てあたたかなる南風吹て、跡に雨ふること度々にて、此節殊に天気なし、