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日本鹿子
十二
同国〈◯播磨〉中名所之部 垂水(たるみ) 須磨と大倉谷との中道也、明石のうち也、うたにたるみの上のさわらびとよめるは、此所のことなりと雲り、 明石浦 ほの〴〵とあかしのうらと詠ぜし、此浦也、大倉谷より十町ばかり西に松一村立て、人丸の塚今にあり、〈◯中略〉 印南野(いなみの) 大倉谷より人丸塚お西に見てくだれば、かにが坂といふ所お過て、清水の里、野口などいふ所有、印南郡のうち也、〈◯中略〉 野中の清水 印南の在所の前に有之、此清水の流海へ通ふ也、細き流也、海道より此川お渡て行也、十町ばかり北野中に池有、それお清水といふ也、印南の北は美作也、山本はるかに見えたる也、藤江の浦ひかさの浦など雲は、明石にもちかし、蔦の細江といふ所もあり、〈◯中略〉 飾磨(しかま)里 印南野より西也、〈◯中略〉しかまのかちと詠ぜしは、褐色染のこと也、此所の名物也、 室津 かく川といふ宿の、未申のかた也、 高砂〈◯中略〉 青山 かく川の宿より西なり、海道也、宿有、 夢前(ゆめさき)川 書写山より南のかた也、北より南へ流たる川也、 恋の浜 恋の松原とも雲也、当国と備前の堺也、 尾上の松 高砂より福どまりといふ所へこゆる間、川より東のかたにあり、 会根の松 会根村と雲所の海辺にある松也、太さ五かヽえ程ありて、枝々四方にわかれ、無双の名木也、