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増鏡
十九くめのさら山
福原の島より宮〈◯尊良〉は御舟にたてまつる、〈◯中略〉はりまの国へつかせ給て、しほやたるみといふ所、おかしきおとはせ給へば、さなんと奏するに、名おきくよりからき道にこそとのたまはせて、さしのぞかせ給へる御さま、かたちふりがたくなまめかし、けぢかきかぎりはあはれにめでたうもと思ひきこゆべし、大くら谷といふ所すこしすぐるほどにぞ、人丸のつかはありける、あかしの浦おすぎさせ給に、島がくれゆく舟ども、ほのかにみえてあはれなり、〈◯歌略〉野中のしみづ、ふたみのうら、高砂の松など名有所々、御らむじわたさるヽも、かヽらぬ御ゆきならば、おかしうもありぬべけれど、〈◯下略〉