[p.0633]
太平記
十六
将軍自筑紫御上洛事附瑞夢事 新田左中将〈◯義貞〉の勢已に備中備前播磨美作に充満して、国々の城お責る由聞へければ、鞆の浦より左馬頭直義お大将にて、二十万騎お差分て、徒路お上せられ、将軍〈◯足利尊氏〉は一族四十余人、高家一党五十余人、上杉の一類三十余人、外様の大名百六十、兵船七千五百余艘お漕双て、海上おぞ上られける、同〈◯延元元年五月〉五日備後の鞆お立給ひける時、一つの不思議あり、〈◯下略〉