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道ゆきぶり
廿日は厳島(○○)にまうで侍、此島は峯三四ばかりそびえあがりて、み山木の年ふりたるうちにまじりて、老たる松の岩上に生かたぶきつヽ、礒ぎはまでしげりたり、東にさし出たる山の崎と、此島のあはひ二十余町ばかりへだてたる中に、小じまのさと〴〵しげにてみゆるひとつ侍、これなんこぐろ島(○○○○)といふなるべし、此島のあたりおばあたとヽぞいふなる、 島もりにいざこととはんたがために何のあたとヽ名にしおひけむ、その南にあたりて、かすめる島々あり、まさかりのせとヽぞ申なる、此国と伊予の国とのさかひにて侍るとかや、海のうへに国のさかひのみゆるこそめづらかなれ、〈◯中略〉島の四方に入江どもあまた有て、見所かぎりなく侍るなり、百浦侍るとぞ申、