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厳島図会

厳島は安芸の国西海中にあり、府城広島お去ること五里、佐伯郡に属せり、島周廻七里、西北お面とし、東南お背とす、遠くは伊予周防の地お望み、ちかくは佐伯郡の地方に対せり、旧島号は恩賀島、また御香島、あるは霧島、我島など称へりといふ説あれどさだかならず、おもふにこの島、もとはさせる名もなかりしに、御神の鎮坐し後、その神号の市杵とかよはして、頓て伊都岐島とは号たるならん、類聚国史、延喜式、三代実録、山槐記、拾芥抄等の諸書、みな伊都岐島とあり、後世専ら厳島(いつくしま)と称へたり、是もまたその音のかよへるゆえなり、〈◯註略〉また宮島といへるも、其唱既に久しくして、高倉帝御幸記及び殊域の書、登壇必究、図書編等にもみな宮島とかけり、島のうちに七浦八景の称ありて、日本三名区の其一なり、〈◯下略〉