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西遊雑記

岩国は吉川の城地にして、むかしは山にありて要害もよき城なりしよし、今は麓に僅なるかきあげ城なり、分内せまきゆへに諸家中川の東にあり、〈◯中略〉産物半紙と称せる紙上品なり、海魚はいふに及ばず、鯉鮒鮎たくさんの所なり、昔時は此地に楮のなかりし所なりしに、吉川家の士何某といふ人、地の利おさぐり、百姓に楮の木お植させ紙おすく事おならわしむ、是よりして此辺の民家富饒となりし事也、〈◯中略〉岩国の地川お帯、東西山つらなり、海近く、要害もつともよし、〈◯中略〉岩国より西国海道へいづる道すじ、宇治の里といふ所あり、茶お以て名産とす、城州宇治の茶も此所よりなるべし、地名も同名にて茶お名産とするゆへあるべし、