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人国記
周防国 周防国之風俗は、律儀第一なれども、吉敷佐波都野三郡之者は、義理少く、昨日まで傍輩と肩お双ぶる人おも、今日仕合よければ、主君と仰ぐ風俗にて、常之律儀も利欲之為に無になり、法お背く人、百人に七八十、如此残而二三十人の人柄は、如形嗜む様なれども、終には右の人に従ふ故に、皆其風俗と成べし、大島玖珂熊毛三郡之人は、両郡の人より少はまし也、然ども是も堕落の方に付たる風儀也、能き人出来る事希にして、悪事もすくなく善事も亦希なり、然ども是国之人は気少き故、つれなくして不敵なる意地は少もこれなし、