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西遊雑記

廿三日、室積お一見せんとて左道へいり、宿なくして大ひに屈し、稗田村といふ所のはにふの軒に夜おあかしぬ、廿四日、室積にいたる、此浦はいたつて古き所にて、聖空上人の事跡、世にいふ普賢菩薩遊君に化して、聖空上人に対面せしと雲地にして、今に大黒屋恵比須屋といふ唱家残りて、聖空上人の時代より続きし家なりと、土人のいひ伝ふ事なり、風景能浦にて、江の浦といふ処に、元信〈古法眼の事也〉筆捨松と称す名木も有り、〈◯下略〉