[p.0726][p.0727]
紀伊国名所図会
三下海士郡
友が島〈また鞆がしまとも、土俗これお苫がしまといへり、古名妹がしま、新田の旅店より西南にのぞむところのしまおいふ、形見浦の条下に記せる地しま沖しまの外に、神島お加へてすべて三島なり、〉 友が島の勝景たるや、古しへ伝へて神仙の幽栖とし、敢て窺ひ探るもの一人もあることなし、嘗て役(えん)の角仙足跡お著しより、遂に修験道の行所となれり、今にいたつて聖護三宝両院の配下、援に来て修行おなすこと曾て解ることなし、其島都て三つあり、地島、沖島、神島なり、其形おいはヾ地島沖島は、鳥の翼お張れる勢おなして、譬へば左右の眉の人の面にあるがごとくしかり、神島は其眉のうへに、黒子お添たらんごと、やヽ西南のかたに浮出たり、先加太にて舟おやとひ、直に牛が首にいたつて、上る所の者是地島なり、陸にちかきおもて、さは呼べるなるべし、島の周廻やがて二里にも足りなん、青松蓊蔚として、曾て他の雑樹なし、〈◯中略〉神島は其周廻三百歩に過ず、〈◯下略〉