[p.0734][p.0735]
紀伊続風土記
四十二伊都郡
総論 当郡は那賀郡の東にありて、東は大和国宇智吉野両郡に界し、南は在田郡に接し、北は河内国錦部郡に界す、其広袤東西六里、南北九里、伊都の義詳ならず、按ずるに、伊都は糸の義なるべし、本国に糸の縁ある事は、延喜式に、凡貢夏調糸雲々、紀伊等十二国並上糸とあり、〈◯中略〉当郡の形勢お考ふるに、葛城峰北に連なり、長峯南に連なり、中間紀川東西に貫き流る、又東は大和の堺真土山あり、西は那賀の堺背山ありて東西お塞ぎ、郡中即一谿谷の如し、村邑川に傍ひて碁布し、又山巒谿谷の間に散在す、川南お高野領とす、古の神戸郷是なり、川北は古の賀美村主揖理桑原四郷の地なり、川南峯巒重畳して、尽深山幽谷にて少の平野なし、然れども地の大さ郡中三分の二に居る、是古の丹生神地なり、〈◯下略〉