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南遊紀行諸州めぐり
四紀伊
和歌山(○○○)は淡島より三里あり、其間右の方の浜辺に松多し、此辺白(しら)浦なり、和歌山町の方へ行に、紀の川お舟にてわたる、是吉野川の下也、大河也、紀伊のみなとヽ雲名所也、客船多し、和歌山の城は紀州君居給ふ、城下の境地ひろくゆたけし、和歌山と和歌浦の間の北の浜お吹上と雲、吹上の町は和歌山とつヾけり、吹上にも士の屋宅有、寺院多し、〈◯中略〉凡和歌山は天然の景色すぐれ、其上大国の城下なれば、神社仏寺いかめしく、其洒掃もきよければ、一入の光景おませり、