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南遊紀行諸州めぐり
四紀伊
かだ(○○)は民家千軒有と雲、富人多し、此辺名草郡也、かだの先に淡島あり、是にも民家多し、かだと淡島は民屋つヾけり、〈◯中略〉賀田の北の出崎お和田の崎と雲、賀田淡島の前は入海也、此地佳景也、西国の商舶泊る、遠江などおのりて、江戸奥州に行舟は、苫が島とかだの間お通り、又苫が島の外おも通る也、淡島の前は港よからずといへども、旅舶の纜お繫ぐ所也、淡島かだの辺より阿波国もむかひに近く見ゆ、今宵はかだに宿す、旅舎は二階にて海にのぞめり、前に客船多く、むかひに弁才天の山そばたちて青く茂り、おきに苫が島二ながらはるかに見ゆ、風景よし、此所にかだめとて、わかめの名物有、めづらし、