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淡路常盤草
二津名郡
由良浦(○○○) 洲本府城お距ること三里、東南海浜にあり、紀伊国海部郡お去こと海程三里なり、長汀海に出て港中広く、諸州の海舶来り泊ること多し、国君里邸あり、漁家商家軒お双ぶ、大なる鱣魚ありて港中に来往すれども、港お利して人お害する事なしと雲、漁子は多く魚蝦お取て諸広邑に行き、海婦は大石花お負戴して、国中に貨る、この物石花(ところてん)のごとく、凍子として酢豉に和して多く食すれども毒なし、畿内の人は食せずと聞り、また板裙帯(いたわかめ)お出す、海菜お方(けた)に重ねて乾したる也、又白海苔(ほやのり)あり、凍子となして大石花に勝れり、山中には駒鳥三光鶯などあり、児輩捕て籠にす、洲崎の砂松伴島の緑螺賞すべし、伴島は是より一里沖にあり、紀伊国に隷く、