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淡路常盤草
一淡路国雑著
土産 藤原明衡新猿楽記、諸国土産部淡路墨、今按るに、むかしは墨名物なりしにや、今はなし、俗間の書に淡路の土産お載す、武島女郎〈魚名〉辛螺、荊螺、光螺、苦竹、煎餅、飴などあり、これらはいふにたらぬものなり、土地米穀に宜しく、気味甘美にして醞醸などに殊に佳也、鱗介は四方海辺に多し、塩はむかし三原郡にて、江尻塩浜などの近里に多く焼たれども今絶たり、近きころ福良湊などの地に焼所あれども、いまだ国用に足らず、 山林多くは松あり、伐て阿波の撫養、播磨の飾摩などの塩木に売なり、この外桑楮漆藍などは多く作らず、四木三草の類お植て、民用の助とせまほし、綿は桓武天皇の御時、淡路等の国々へ綿たねおたまひて植させられしかども、種芸の法疎なりしにや絶にしが、近ごろ当分所々に作り侍れど、いまだ広く作らず、民間に綿布多くおり出す、是多くは畿内のわたにて織なり、草綿なれども木綿布と呼なり、