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南海通紀

四国并近国錯乱記 阿波国は四国の辺鄙にして、麁暴勇悍の山人なれども、細川刑部大輔頼春、其子右馬頭頼之二世の武徳に化せられて、国中に兵革お用る事なく、讃岐守詮春より以来、義之、満久、持常、成之、政之、義春、之持まで八代の間は、讃岐守屋形と号す、其武威あつて国平也、然と雲へども大永享禄の比より国柄お三好氏に致て掌しめ給へば、細川家の権漸々に衰、三好家の威日々に盛にして、国家移替といへども、細川讃岐守持隆愚昧にして其是非お不弁阿波国は細川屋形の領国と雲へども、三好家の有と成て、細川屋形は賓客の如く、管領晴元は流浪の人の如く、三好は亭主と成て奔走す、終に国家三好の有と成ん、