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冠辞考
五多
たまもよし 〈さぬき〉 万葉巻二に、〈長歌〉玉藻吉(たまもよし)、讃岐国者(さぬきのくには)雲々、玉藻与(よ)といひて、奴(ぬ)とつヾけたり、〈佐お発語のごとくつゞけなせるは、さねかづらお寝る事にいひなすが如し、其外語お隔てつゞくるもつねの事なり、〉吉(よし)は例の借字にて、与は呼出す辞、志は助辞のみなる事既にいひたり、奴とは玉藻の波にぬえ臥おいへり、下の奈行に挙る奴要草(ぬえくさ)の女(め)にしあれば、夏草の相ねの浜、夏草の奴島の崎などいへるは、草の偃(ぬえふす)おいひつる中に、奴とのみつゞけしおおもへ、〈ぬえ、なよヽか、なびく、ぬる、ねるなど語通へり、〉