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古事記伝

伊予国、中巻下巻には伊余と書り、此は伊予郡より出たる名なるべし、〈其例多し〉神名帳に彼郡に伊予神社もあり、同郡に伊予豆比子(いよづひこ)の神社と雲もあり、〈こは地名より出たる神名なるべし〉名義思ひ得ず、愛比売(えひめ)は、兄弟の女子お兄比売弟比売(えひめおとひめ)と雲例多かれば、此国は女子の始の意にて、兄比売(えひめ)か、〈書紀皇極の巻に長女(えひめ)ともあり、伊世国多気郡には兄国弟国(えくにおくに)てふ村の名もあり、〉又伊予お元よりの大名にして見れば、彼大御歌〈◯応神〉の如く弥二並宜島々(いやふたならびよろしきしま〴〵)の意にて、愛(え)は宜(よろし)き意か、〈吉(よき)お愛(え)といふ例多し、上文の愛袁登売(えおとめ)のたぐひなり、〉比売(ひめ)は比古(ひこ)に対て、女お美(ほめ)て雲称(な)にて、比(ひ)は産巣日(むすび)などの日の意なり、