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今昔物語
二十六
土佐国妹兄行住不知島語第十 今昔土佐国幡多郡に住ける下衆有けり、己が住浦には非で、他の浦に田お作けるに、己が住浦に種お蒔て、苗代と雲事おして可殖程に成ぬれば、其苗お船に引入て殖人など雇具して、〈◯中略〉十四五歳許有男子、其が弟に十二三歳許有女子と、二人の子お船に守り目に置て、父母は殖女雇乗んとて陸に登りけり、〈◯中略〉然て其船おば遥に南の沖に有ける島に吹付けり、〈◯中略〉大なる島也ければ田多く作り弘げて、其妹兄が産次けたりける孫の、島に余る許成てぞ于今有なる、土佐の国の南の沖に妹兄の島(○○○○)とて有とぞ人語りし、〈◯下略〉