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筑紫道記
明れば廿九日〈◯文明十二年九月〉生の松原(○○○○)へと皆同行さそひて立出侍るに、大なる川お打渡り、みれば右に一村の林有、則聖廟の御社なり、〈◯中略〉やがてかの松原に至る、大さ一丈ばかりにて、皆浦風にかじけたるも哀れなり、引入て社有、〈◯中略〉御神のいきよとてさし給ひけん松は早う朽て、その根お人守りにかけしなどかたるも、昔こひしきもよほしなり、社壇の右の方に、大き成松のしかもすがた常ならず神さびたる有、是は末遠くいきの松ともいふべかりけるとみるに、我齢の程たのむかげなきも心細くて、又はかなしことお、 あすしらぬ老のすさみのかたみおや世おへて生の松にとヾめん