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筑後志
一風俗
性寛舒質貞実、才慧敏智巧明成器有て、文武諸技に堪へ、工思有て能く物お摸す、華麗お好尚し、滋味に厚し、些の英気有て義理お好み邪妄お憎む、困勤お厭ひ、安逸お甘んず、凡そ州内の東塞〈俚俗上筑後と称す〉の郷民、淳素勁勇、古風お存す、西郷〈俚俗下筑後と称す〉の民心、痴嚚懶惰、義気無し、嘗て先君春林公、〈◯有馬豊氏〉丹州福知山より米府〈◯久留米〉に転住の後、府下の言語殆んど京語に近し、是丹州の本語お摸するもの也、唯生葉の山民のみ本土の故言お存して、頗る訛強なり、俚俗これお生葉(いくは)の声(じやう)と雲ふ、