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豊前志

上毛郡〈郷四、村七十三、◯中略〉 重春雲、上毛お、今かうげと唱ふは、音便に崩づれたるなり、或人が所蔵せる正安四年の田地沽渡証文には、下毛おしもつみけと書けり、然れば、上毛おも其頃まではかむつみけと正しく唱へりし事著し、扠上毛、下毛と郡お、上下に分ちたるは、稍後世の事にて、往昔は、美毛(みけの)郡と雲ひたりけむ、そは上毛、下毛の郡界お流るヽ河お、景行天皇紀に御木川とあるにて知らる、総べて上下前後の名、郡国にあるは、後に別ちたるものにて、豊前豊後は、本豊国なるお前後に分ち、上野下野は、本、毛野国なるお、上下に分てる類皆同じ、猶美毛の名義は、下毛郡大江社の下にて雲はむ、 或記雲、細川家より御引渡の高、上毛郡、三万五百七十石八斗一升六合一勺一才、