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西遊雑記

佐賀の関といふおば、外浜、内浦にては市中五百軒ばかり、よき船かヽりの湊ゆへに、日向大隅より海上往来の船、日和待おする浦にて、淋しからぬ也、唱家も数軒みへ侍りぬ、当世の風俗にや、浦々島々に至る迄、飯もり茶たて女などヽ称し、老女有所多し、右に図〈◯図略〉せるごとく、佐賀の関は勝景の地にして、九州にては東方の端にて、伊予の佐田の岬へ海上六里余といふ、