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佐藤元海九州記行
抑当国〈◯肥前〉は、鎌倉時代よりの旧領にて、西は海上とは雖ども、小大の島数甚だ多く、凡そ三十里程の間に散在し、魚塩お始め、物産の利頗る大なり、東方陸地は五十町路にて、方七八里、土地亦極て膏腴なり、且又当国の山には水気甚多く、山頂までも水田お開き、稲お作るべし、白堙赤堙も多きお以て、陶器お焼き出すも極て便に、石炭膏風多し、薪炭に究するの患ひ無し、実に富豊なるべき国なる哉、