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佐藤元海九州記行
唐津(○○)城は、秀吉公の築かれたるにて、石畳お海に築出し、甚だ堅固確壮の城なり、町家も四五千軒も有るべし、頗る賑なる所に見ゆ、城外に唐津浦あり、虹が浦とも称して、勝景の地なり、東西二里、北は朝鮮国に対し、海面は玄海灘にて、潮水至て深し、海浜は白沙の干潟なるお以て、日に映じて極て奇麗なり、並松の青々たると、白沙と、夕日浪お照す紅影と、虹お見るが如きお以て名お得たり、且又巾振山、浮竹山、玉島川、大島山等の名所あり、浮竹山は頗る此辺の高山にて、北方遥に朝鮮の山お見ると雲ふ、絶景極て多し、唐津より福岡城下に行くには、十里の行程なり、此間に生野松原と雲ふ名所あり、又末村に至るには九里、末村より太宰府に一里半あり、