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西遊雑記

日向の国は、西のかた肥後の界まで、嶮山折重り〳〵、国人いづれにたづね聞ても、国の境お知るものなく、世にいふ隠れ里、肥後の米良山、五け庄といふにつヾきし深山なり、人物言語もいやしく、豊後お下国と思ひしに、今一段劣りし下々国なり、海辺には平地の所も見ゆれども、西のかたは山分に入りて、更に平地なし、万物至て不自由の国にて、国不相応に人も少きゆへ、他国の人お買とつて下人とする国風有り、