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西遊雑記

日向大隅の二州にて、一家に女馬三匹五匹も飼て、駒おあまた出す国にて、九州すべて両国の駒お用る事也、両国にては、年毎に三千匹も産せると土人の物語き、即詳ならず、扠馬お追ふお見るに、馬卒に男子は一人もなく、婦人のみ也、一人して五匹も七匹も放し綱にて追ふに皆々女馬とは雲ながら、刎合食合もせず、無為の馬也、男子牛お遣ふ、手にて山分の材木お牛にて引出す也、牛の大とさ大津の車牛の如し、かくの如きの地、車の上にいか程大成材木にても載置、道の嶮しきもいとはずして、牛に引する事也、国風とは雲ひながら、無調法なる事也、