[p.1204]
地理纂考
十二薩摩河辺郡
黒島 鹿児島県庁より西南三十八里、〈山川港より海上二十五里、硫黄島に隷く、同島より東方十里硫黄島在番管轄、〉周廻四里十八町、平民二百八十八人、〈男百四十六、女百四十二人、〉戸数五十四、海岸皆石巌高く相連り、平沙湾曲なし、島中都て峯巒襲重して、林木天お覆ひ、山色黒し、是に因て名お得たりと雲ふ、絶頂も又巌石多くして平地ある事なし、人家は岩石お削り、石垣お築て平地とし、住所とせり、村落二け所にあり、北にあるお大里といひ、西にあるお片泊と雲ふ、当島山川多き故に、流水お山間渓谷に引き、高下重々水田お設けたり、然れ共瘠田にして、収穫少し、又陸田は山間に地お開き、竹木お焼きて種植す、別に糞お用ひず、大凡二三年も過れば、土力尽るお以て、又別所に新地お開くとぞ、此島小さしといへども、山林多く、屋久島の形状に似たり、 土俗 習俗凡硫黄島同じ、人家笹葺のみ、男子は漁釣お専らとし、婦女は耕作お業とす、又婦女は歯お染れども、生涯眉お払はず、土人の習性最淳朴なり、