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薩藩経緯記

日本総国の中に、草木の能く繁行し、物品の多く化育すべき諸州は、西海道お以て第一とし、山陽道これ次ぎ、南海道及び畿内の地又これに次ぎ、東海道及び山陰道又これに次ぎ、北陸道東山道この二道は最下とす、又其の第一たる西海道の中に於て、盛に物産お開発して、大に境内お富裕すべき土地お撰ぶときは、日向、大隅、薩摩の三州に若く者なし、其説何となれば、此三州は日本総国の極南境にして、日輪の正焦最も近く、陽霊の光焔お以て土と水とお炙りて、化育お醸煉こと他国に勝れて強きお以てなり、是故に、日本は万国中に於て、気候の最も良和なる寿域にして、此三州は又日本中の最も物産豊饒地なり、