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地理纂考
十三薩摩
穎娃郡 東揖宿郡、西北川辺郡に接し、南は海に対す、郡内穎娃の一郷お置く、続紀に、薩末比売、久売、衣評督衣君とある是なり、評は朝鮮字にて、古は郡の字に換用ふ、又和名抄に、穎娃郡開聞穎娃とあれば、開聞も当時郷名なりしなり、今開聞の社号に遺りてさる郷名なし、和名抄に穎娃は江乃とあるお、古事記伝に曰、穎娃字は紀伊の伊乃字などの例にて、土の音の韻お添へたるのみなり、和名抄に江乃とある、乃の字お削るべしといへるはさることなり、又曰、国人のえとも雲ふ、其も上お長く引て呼なり雲々といへれど、国人更にえいとは雲はず、薩摩国図田帳に、穎娃郡五十七丁雲々と見へたり、