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倭訓栞
前編五衣
えぞ 毛人島(○○○)おいへり、明人輿地の図説に【野作】(えぞ)と書せるは、音おとれり、えぞの千島(○○○○○)といふは、毛人島に沿たる多くの小島お指ていへり、毛人は宋書に見え、続日本紀に蝦狄と見え、蝦蛦は唐書に見えたり、両山墨談には交易国ともへり、〈◯中略〉周廻凡そ八百里といふ、男は総身毛生て熊の如し、女は色白く、共に耳がねおせり、今津軽南部にも蝦夷人あり、是往古よりといへば、日本紀に書せる如し、〈◯中略〉日本人よりえぞおあひの国(○○○○)といふ、日本と唐山との間の義也、えぞといへば、蝦夷人しよもないかたなどいふて怒る、しよもないは、いやなどいふ事也、