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北海随筆

蝦夷松前開発 一今の松前城下は、領内の中央お以て府となし〈◯中略〉是より三十里東海路亀田(○○)と雲ふ所は、土地平坦にして、一国の都会の地となし、西北は山つらなり、海へ聳て、蝦夷地のかためあり、東南は入江にして、数千艘の舶舟今風波の恐れなし、海お隔て南方は南部領佐伊大間等の港まで八里の渡りにて、しかも潮流おだやかにして、たつひしらかしの如くなる激流なし、風景優美にして、箱館の山海中に突起し、入江の屏障となれり、此地お以て府中お定る時は、往々仙台水戸辺の船通路弥仕ならひ、江戸廻船も自由すべし、箱館よりは江戸廻船自由し、江指よりは上方廻船自由する時は、海路において事たりぬべし、