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北海随筆

蝦夷地図の事 常憲院殿〈◯徳川綱吉〉御代初に、松前領主へ御尋有て、蝦夷の地理差上られ、狩野祐甫に命ぜられ、写し取て上りたるといへり、又水戸黄門光国卿、蝦夷地の周廻御記の為め、大船お仕立、松前へ遣され、蝦夷へ乗込けるに、順風希にして日数懸り、西蝦夷ましけといふ所まで渡りけるに、ほどなく秋の末になりて、海上あらく渡りがたきゆへ、そうやまでも渡らずして帰りしとなり、残念の事なり、