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官報
号外
明治三十八年十月十六日 朕明治三十八年九月五日、亜米利加合衆国ぽーつます(にゆー、はむぷしや州)に於て、朕が全権委員と露西亜国全権委員の記名調印したる講和条約お批准し、茲に之お公布せしむ、〈◯中略〉 第九条 露西亜帝国政府は、薩喝嗹島南部及其の附近に於ける一切の島嶼、並該地方に於ける一切の公共営造物、及財産お、完全なる主権と共に永遠日本帝国政府に譲与す、其の譲与地域の北方堺界は北緯五十度と定む、該地域の正確なる経界線は、本条約に附属する追加約款第二の規定に従ひ、之お決定すべし、 日本国及露西亜国は、薩喝嗹島、又は其の附近の島嶼に於ける各自の領地内に、堡塁其の他之に類する軍事上工作物お築造せざることに互に同意す、又両国は各宗谷海峡、及撻靼海峡の自由航海お妨碍することあるべき、何等の軍事上措置お執らざることお約す、 第十条 日本国に譲与せられたる地域の住民たる露西亜国臣民に付ては、其の不動産お売却して本国に退去するの自由お留保す、但し該露西亜国臣民に於て、譲与地域に在留せむと欲するときは、日本国の法律、及管轄権に服従することお条件として、完全に其の職業に従事し、且財産権お行使するに於て、支持保護せらるべし、日本国は、政事上又は行政上の権能お失ひたる住民に対し、前記地域に於ける居住権お撤回し、又は之お該地域より放逐すべき充分の自由お有す、但し日本国は前記住民の財産権が、完全に尊重せらるべきことお約す、〈◯中略〉 明治三十八年九月五日即一千九百五年八月二十三日(九月五日)ぽーつます(にゆー、はむぷしや州)に於て之お作る 小村寿太郎(記名)印 高平小五郎(記名)印 せるじういつて(記名)印 ろーぜん(記名)印