[p.0040]
筆のすさび

一里程 我邦の一里は、西土の十里にあたること、彼方の書にても、しば〳〵見ゆれば、記事の文、或は詩にても、吾土の一里は十里といひても通ずべきこと論なし、然れども誦して響のよろしからぬ事もあるやうにおもはるれば、是お竹山先生に問ひしに、竹山の雲へるは、周の時の書に、なほ夏正お用ふるもの多し、吾邦の里程、今の法に改りしは、何時の事か明ならざれども、奥羽の地は、猶昔の里程にて計るとぞ、されば官府へ奉る文書にもあらず私に記するには、いづれにても然るべきならんと、これによりて、余が詩にも百里お千里と用ひしなり、