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古事記伝

柱と雲名義は、波斯(はし)は間(はし)なるべし、〈◯古史伝雲、良は添りたる辞なるべし、〉間お波斯と雲例多し、間人(はしひと)又万葉の歌に相競端爾(あらそふはしに)と雲るも、端は借字にて間(あひだ)にの意なり、又木にもあらず草にもあらぬ竹のよの波斯(はし)に吾身はなりぬべらなり、と雲歌も、竹お木と草との間と雲るなり、かくて柱は屋(やね)と地との間にわたせばなり、又橋も同意(○○○○)か、此岸と彼岸との間にわたせばなり、又今俗言に、妻どひの最初に、言お通はしそむる媒お、波斯加気と雲も、橋懸の意にて、右の柱の事にもおのづから通へり、又箸と雲名も、此物は必二相対ひより合て其用おなす物なれば、夫婦の意に似たり、又事の初お端(はし)といふも、此の御柱廻りの事に由あるなり、