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古今著聞集
十六興言利口
将軍入道殿〈◯藤原頼経〉はじめて上洛の時、〈◯歴仁元年〉清水の橋お渡りたりけるに、いづれの武者の分にてか有けん、しろきひたヽれ著たる男の、たけだちことがらさる体なるが、奉行して有けるが、文おみて立たりけるお、わかき女房の清水まうでする物と見えたるが、此男のもとへ立寄ていひかけたる、 たぢろくかわたしもはてヾふみみるは、といへりけるお、此男つけんずるきそくにて、しばしうちあんじけるが、此心やまはらざりけん、大声お出して、いかに将軍の渡させ給ふ橋お、たぢろくかととがめければ、おそろしくて足ばやにさりにけり、