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明君徳光録

神田橋焼失御普請の事 一明君の御代神田橋類焼あり、早速普請仕候様被仰出候後、右橋出来の義お被遊御尋候処、水野和泉守承りにて言上申上られ候は、右橋の御普請入札申付、吟味仕候故、未出来不仕旨申上候処、明君被為聞召、甚だ御機嫌損じ、橋普請に入札とは甚不行届の事也、殊に神田橋の義は、往来も繁く、橋なくしては人々の難義いくばくぞや、早速掛可申也、平生倹約お用るは何のためなるや、け様の時節、入用お厭ひ人の難義おもせざる様に致すべきためならずや、急ぎ申付よと、重き上意有之し也、