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源平盛衰記
十九
文覚発心附東帰節女事 文覚道心の起お尋れば女故也けり、〈◯中略〉女〈◯あとま〉今年は十六也、盛遠は十七に成けるが、其歳の三月中旬に、渡辺の橋供養あり、盛遠紺村濃の直垂に黒糸威の腹巻に袖付て、折烏帽子係にかけ、銀の蛭巻二筋通して巻たる長刀左の脇にはさみ、其日の奉行しければ、辻々固たる兵士共下知し廻して、橋の上に立渡ゆヽしくぞ有ける、