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枕草子

なほ世にめでたき物 里なるときは、たヾわたるお見るにあかねば、御やしろまで行て見る折もあり、おほきなる木のもとに車たてたれば、松のけぶりたなびきて、火のかげにはんひのおきぬのつやもひるよりはこよなくまさりて見ゆる、はしの板おふみならしつヽ、こえあはせてまふほども、いとおかしきに、水のながるヽおと、ふえのこえなどのあひたるは、まことに神もうれしとおぼしめすらんかし、少将といひける人の、としごとにまひ人にてめでたきものに思ひしみけるに、なくなりて上の御やしろの一の橋(○○○○○○○○○○)のもとにあなるおきけば、ゆヽしふせちに物おもひいれじとおもへど、なおこのめでたき事おこそ、更にえおもひすつまじけれ、