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太平記
剣巻
摂津守頼光の内に綱、公時、貞道、末武とて、四天王お被仕けり、中にも綱は四天王の随一也、武蔵国の美田と雲所にて生れたりければ、美田源次とぞ申ける、一条大宮なる所に頼光聊有用事ければ、綱お使者に遣さる、夜陰に及びければ鬚切お帯せ、馬に乗てぞ遣しける、彼に行て尋ね問答して帰りけるに、一条堀川の戻橋お渡りける時、東のつめに齢廿余と見えたる女の、膚は如雪にて、誠に姿幽なりけるが、紅梅の打著に守懸け、佩帯の袖に経持て、人も不具、隻独南へ向てぞ行ける、