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太平記
三十一
八幡合戦事附官軍夜討事 山名右衛門佐師氏、出雲、因幡伯耆三箇国の勢お卒して上洛す、路次の遠きに依て、荒坂山の合戦にはづれぬる事、無念に思はれける間、直に八幡へ推寄て一軍せんとて、淀より向はれけるが、法性寺の左兵衛督、援に陣お取て、淀の橋三間引落し、西の橋爪に掻楯掻て相待ける間、橋お渡る事は協はず、さらば筏お作り渡せとて、淀の在家お壊て筏お組たれば、五月の霖に水増りて押流されぬ、