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太平記
三十六
清氏叛逆事附相模守子息元服事 相模守〈◯細川清氏〉普請の為とて、天竜寺へ参りけるが、不例庭に入て物具したる兵共、三百余騎召具したり、将軍是お聞給て、さては道誉に評定せし事、はや清氏に聞へてけり、さらんに於ては、却て如何様被寄ぬと覚るぞ、京中の戦は小勢にて協まじ、要害に籠て可防とて、九月二十一日の夜半計に、今熊野に引籠り、一の橋引落して、所々掻楯掻き、車引双て逆木轅門お堅めて待懸給へば、今川上総守、宇都宮参川入道以下、我も我もと馳参る、