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袖中抄

くめぢのはし〈いはゞし◯中略〉 童蒙抄雲三斎略記雲、秦始皇、海中に石の橋おつくる、海神これがために柱おたつ、始皇あひみんことお求む、海神のいはく、我形みにくし、我形おうつすことなかれ、帝則海に入事卅九里にして海神おみる、左右の人おして縛手て、うごかする事なし、画にたくみなる人、ひそかに足おもちてその形おかく、神いかりて帝約おそむけり、はやくさりねと、始皇馬おはやめてかへる、馬のしりあしおひくにしたがひてはしつくる、にはかにきしにのぼることお得たり、画がきつるもの、水におぼれてうみにしぬと雲々、されば神のわたす石橋は、いづこにもわたしえぬ事とおもひあはするが似たれば、かきのするなり、私考雲、秦始皇在城西南牛耳山北、造石橋欲渡海観日出入、卅里、石橋往々猶存、旧説始皇以断石、石自行而生、今西岸石皆東首、隠賑以鞭橽、癈言以駈逐、此事虚疑有斯跡也、