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古今著聞集
五和歌
清輔朝臣の伝へたる人麿の影は、讃岐守兼房朝臣、ふかく和歌の道お好みて、人麿のかたちお知らざることお悲みけり、夢に人麿来りて、われおこふる故に、かたちおあらはしけるよしお告げヽり、兼房画図にたへずして、後朝に絵師おめして教へて書かせけるに、夢に見しに違はざりければ、悦びてその影おあがめてもたりけるお、白河院この道御好ありて、かの影おめして勝光明院の宝蔵におさめられにけり、〈◯中略〉長柄の橋の橋柱にて作りたる文台は、俊恵法師が本よりつたはりて、後鳥羽院の御時も、御会などに取りいだされけり、一院〈◯後鳥羽〉御会に、かの影の前にて、その文台にて和歌披講せらるなど、いと興あることなり、