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大神宮参詣記
康永元年十月十日あまりの頃、太神宮参詣、〈◯中略〉五十鈴川は大宮と風の宮とのたにあひより流れて、深山木のこだかき陰におちくる水の音、まことに心ぼそし、〈◯中略〉滝祭の神とて、河の洲崎、松杉などの一むらたてるばかりにて、御社もましまさず、〈◯中略〉きたお望ば長橋(○○)のながれおきるあり、緑松たれて行人の道おさヽへ、南お顧みれば高巌なみおくだくあり、紅葉のこりて遊客の心おそむ、所にふれて感おうごかし、ものごとに興おもよほさずと雲ふ事なし、